ピューターの手入れ方法

私はピューター製品を輸入・販売している英国雑貨トゥーシェで働いているわけで、個人的にピューター製品の使用暦は8年くらい。自宅でビールを楽しむ時のお供は、もっぱらピューター製のお洒落なロックグラスです。↓こんなやつ↓
 
ピューター製ロックグラス
 

英国展などのデパート催事で販売業務を行う機会がしばしばあり、ピューター製品をご紹介する際にお客さん達からよく言われる一言があります。

それは

ピューターって手入れはどうするの?

という質問です。
 

今回はピューター製品の手入れについて、いぬおが知っている事を記そうと思います。
それでは細かく話していきます。
 

 
 

ピューターとは?

 

まず、ピューターとは何でしたっけ?という事からいうと、

錫(約96%)+銅(約3%)+アンチモン(約1%)の合金がピューターです。

 
錫、銅、アンチモン
 
詳しくは「ピューターとは?」にまとめておりますので、時間があったらご一読頂けると嬉しいです。
ピューターという金属の特徴をまとめると以下の3つになるのかなと思います。
 

  • 特徴1:ピューターは変色しずらい
  • 特徴2:ピューターは柔らかい
  • 特徴3:ピューターは溶けやすい

 
特徴1と2を頭のスミに入れておいて貰えると幸いです。
 
 

基本的に手入れは不要

 
ピューターという金属は、色などが銀と似ているせいか「真っ黒になってしまうのではないか」と心配する方が少なくないです。
しかし、成分の大部分を占める錫(錫)がほとんど変色しない金属であるため、錫の合金であるピューターもあまり変色しない金属であり、変色に関して過剰に気にする必要はありません。そのため、基本的には変色を戻すための手入れは不要かと思っております。
 

ピューターは、変色を戻すための手入れは不要

 
経験則では、銀のように真っ黒になったピューターを見たことはありません。ただし、ピューターの美しい銀色の表面も時間が経つと若干色が濃くなったり、くすんで光沢がなくなったりはします。200年前のアンティークなどは、かなり鈍い銀色・灰色になっている物がほとんどです。

ただ、アンティークのピューターは現代ピューターと金属構成内容違い、錫の量が70%程度と低かったため、現代品と比較するべきではないかもしれません。

ピューターの変色比較
 
 

ピューターの手入れ方法

 
基本的には手入れ不要です。そうは言っても手入れしたり、修理したい場合もあると思います。この節では、直したい状態ごとにお手入れの実施方法をお伝えいたします。
 

変色、くすみ、スレを直す

 
ピューターは大きな変色はしませんが、表面が鏡面仕上げ(光沢仕上げ)に加工されている場合は、変色・くすみが気になる場合があります。また、非常に薄いスレ・キズなどが気になる場合もあります。
そんな時は「手作業で磨く」のが良いと思います。
 

磨く対象が、食器ならば柔らかいスポンジで、普通の食器のように水+洗剤で洗ってもらって大丈夫です。元々の表面が光沢仕上げであれば、凡そ元通りのピカピカに戻ると思います。


 

磨く対象が、水洗いができない雑貨であればシルバー磨きの布など(研磨剤が含まれている布)で、軽めに拭いても光沢が戻ります。


 
ここで1つ注意点がありますが、それは

「荒い研磨によって傷付くこと」「持ち手に力が入りすぎて変形させてしまうこと」

です。
 
ピューターは金属としては非常に柔らかいため、硬いもので擦るとガリガリ削れて傷付いてしまいます。優しく洗浄・研磨することを心がけてください。
また、細い(薄い)パーツは人の力で簡単に曲がってしまいますので、この点も注意です。ある程度の厚みがあれば人の力ではなかなか変形されられません。
 
 

スリ傷を直す

 
ピューターは金属としては柔らかいため、硬い物に接触したりするとスリ傷や切り傷ができたりすることが多いです。そんなキズを消して滑らかな鏡面に戻したい場合は、回転ルーターのような機械で「削る」のが良いと思います。
 

回転ルーターのポイントをフェルトなどの柔らかい物にしてから削ります。

 
ピューター キズ直し
 
この手法は削るための機械が必要になることと、加減を間違えると逆に被害が広がってしまう為、要注意です。
また、削るとはいえ最終的に滑らかにしたい場合が多いはずなので、鏡面仕上げ用の研磨剤「青棒」をルーターのポイントに付けて磨く事をお勧めします。青棒は楽天やアマゾンで売ってます。

 
硬いポイントで一気に削ろうとすると、削れ過ぎてしまい酷い目にあう可能性がありますのでご注意ください。

 
ちなみにピューターを作っているA.E.Williams工房からは

工場にあるような業務用のグラインダーで研磨してください


と言われていますが、大きすぎるのでトゥーシェ事務所には置けません!小型のルーターで頑張っております。
 
注意:表面が鏡面仕上げ(光沢仕上げ)ではなく「アンティーク仕上げ」や「マット仕上げ」の場合、単純に磨いてしまうとピカピカになってしまい、磨いた一部分だけが風合いを損ねてしまう場合もあります。
 

ヘコミを直す

 
中が空洞になっている容器型によくある事ですが、ピューター製品はぶつけると凹んでしまう事が少なくありません。基本的には、ヘコミは逆側から叩いて戻すしかなく、綺麗に元の状態に戻す事は至難の業だと思います。
 

仕方ないか、と明るく考えるしかありません

 
手間や費用が掛かっても良いのであれば、そういった修理を受け付けてくれる職人さんを探す選択肢もありますが、なかなか難しいと思います。
 
 

変色やキズは個性と考える

 
上記でお伝えしたように

ピューターは傷も付きやすいし、凹みやすい素材です。

 
手入れ方法を紹介しましたが、下手に実施すると状態や見た目が悪化する可能性もあります。
 

頻繁に利用するような製品であれば、ピューターはいつか必ず傷付きます
その度に「あー!傷がっ!!」と気にしても仕方ないかなと思います。

 
そのため、いぬお☆はこう考えるようにしています。
 

このピューター製品も今を生きており、1つの経験を経て1つの傷ができた。
人間で言うならば1歳年齢を重ねたような事なんだ。だから傷を消す必要なんてない。

 

と。ちょっと無理やりかもしれませんが。
古代から使われていた金属であるピューターの物に対して「完璧」「新品」や「コスパ」などの現代的な「質」を求めすぎるべきではないのかなとも思っています。
求めるのは「伝統」や「希少性」、そして何とも言えない「不思議な魅力」にするべきなのかもしれません。
 
 

終わりに

 
英国雑貨トゥーシェが輸入するピューター製品は A.E.Williams(エー・イー・ウィリアムス)というイギリスの工房で作られています。
A.E.Williams工房の紹介ページもありますので、もし良しければご覧ください。
A.E.Williams(エー・イー・ウィリアムス)
 
 
ということで、今回は長々書きましたが終わります。
ありがとうございました。
 
いぬお☆