アンティークは、なぜ高いのか?

明けましておめでとうございます。
いぬお☆ です。
 
今回のテーマは、実はずっと前からブログに書こうと思って温めていた内容になります。

 
 

 
 
 

アンティークは、なぜ高いのか?

トゥーシェはアンティーク業者です

 
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、英国雑貨トゥーシェはイギリスから雑貨を輸入しております。その中にはアンティーク品・ヴィンテージ品もあり、それらの販売もしています。販売中には様々なお客さんとお話しますが、「アンティーク品って高価でしょう?」と言われる事も少なくありません。では、なぜアンティークは高い価格になりやすいのか、今回はこの辺りの原因・理由などを記事にしていこうと思っています。
 
※ あくまで一業者の個人的な見解であり、他にも様々な解釈が存在する事をご理解の上でお読みください。
 
 
 

アンティークの定義

 
本題に入る前に、アンティーク(Antique)やヴィンテージ(Vintage)という言葉の意味をもう一度考えてみましょう。
 
皆さんはアンティークと聞いてどんな印象を持ちますか?恐らく「古い品物」というイメージが湧くと思います。
では似た言葉のヴィンテージとは何が違うのでしょうか?
ヴィンテージは「数十年前くらい?レトロと似てる?」
アンティークは「戦前とか?何百年前とか?少ない・希少なイメージ。価値がありそう」というような漠然とした印象ではないでしょうか?
 
私はその漠然とした感覚が正解だと考えています。

アンティークという言葉に明確な定義はない

と、思っているからです。ヴィンテージもしかり、です。
 
アンティーク品を購入したり、知識がある方は「アンティークは製造から100年経った物しかアンティークではない」と考えている人も多いと思います。この「100年」という分かりやすい数字は、輸入通関の関税率を決めるための閾値になるのですが、あくまでこれは関税率の話だけですので、

80年前ならアンティークと呼んではいけません!

という法律や規則は全くありません。100年経っていなくても、どこの国でも気にせずアンティークと呼んでいると思います。
 
こういった言葉は「文化的なもの」なので、むしろ漠然としたイメージの方が重要だと思っています。
このイメージを少しだけ深堀りすると

アンティークは少ない
→ 大量生産されていない時代に作られた
アンティークは装飾が綺麗
→ 精度の高い機械がない時代なのに、手作業で多く手間がかかっている

このように考えられます。
 
これらを考えた上で、もし明確に線を引く(時期を定義する)とすれば

第二次世界大戦以前がアンティークなのかな?

と考えてます。個人的に、ですが。

 

購入した現代品も100年後にはアンティークになるの?

 
また少しわき道に逸れます。
 
お客さんとの会話の中で、
「今買ったコレも100年後にはアンティークとして価値が出るわね!?」と稀に言われます。
現状の(通関上の)定義では100年経てばアンティーク扱いです。これは事実なので、お客さんとの話の中では「そうかもしれませんね!」と言いますが、実はやや懐疑的な心情です。
 
なぜか?というと、前述したように私の思う価値のある「アンティーク」は「大量生産されていない時代に多くの手間をかけて作ったもの」です。戦後(特に1970年以降)は戦前に比べ、作業のほぼ全てを機械で行い、物の製造効率が爆発的に上がっていると思いますので、「膨大に同じ物がある」「模様が完璧に同一である」「耐久性が高い。壊れないから数が減らない」「人の手間暇はかかっておらず、1つ1つには思いが込められてない」
そのため私の思う「アンティーク」の定義からは外れてしまいます。仮に100年経っていても・・・です。
 
ただし、100年後の未来がどうなっているかを私は知りません。もしかしたら、価値がとても上がっているかもしれませんので、本当の意味での答えは今は分かりません。

 

アンティークが高額になる理由

 
前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。
アンティークがなぜ高くなるのか、という理由をなるべく論理的に説明したいと思います。
幾つかの理由があるので項目ごとに説明したいと思います。
 

1.今、作っても高い

 
これは上述した「手間暇かけて作っている価値」と同じ話になります。
とあるアンティーク品と同じ物を、今作ろうとしても高価な物になるはずです。ただし、「現代の効率の良い機械を使わずに、同じ手法で作る」という意味です。職人さんの賃金は恐らく100年前より現代の方が圧倒的に高く、手作業の技術的には昔の職人の方が高いと思いますので、現代、同じ方法で手間暇かけて作ると、かなり高価な物になってしまうと予想されます。
つまり、製造コストから考えても(ある程度以上は)「そもそも、そのアンティークは高価であるべき」と言えます。
 

2.1点物だから高い

 
「1点物」という単語を耳にしたことがあると思いますが、1点物とは言葉のとおり1点1点が異なり、同じ物ではないと言う事です。アンティーク品は同じデザインでも微妙に柄や形が違っていたり、ダメージ・経年劣化などの状態が異なっていたりします。そのため、狭義の1点物と言えます。
 
よく「アンティークって古いから高いんですよね?」とお客さんから言われますが、いぬお個人としては「はい!ですが、それ以上に『1点物』だから高いんです!!」と言いたいくらい大きな理由です。
 
1点物だとなぜ高額になるのか?1点物にはメリットがありますが、デメリットもあるんです。
メリット

  • 1つ1つの個性を感じられるというスペシャル感がある

デメリット

  • 個々に状態が異なるため、同じ物を簡単に仕入れられない
  • 形・柄・状態などが悪く、売れない物が発生する

 
このメリットは素晴らしいです。個性があるからこそ、持ち主は愛着が強くなると思います。トゥーシェはアンティークに限らず、このスペシャル感を大事にしています。
ただし、デメリットの1つ目は深刻な問題です。普通の現代品であれば、電話やメールで仕入可能です。また、1回のメールで100個、1000個、10000個、何個でも注文できます。1点物は1点仕入れするのに、個々の状態・出来栄えを確認しなければならない事が多く、これにはとても時間がかかるので、商売上においては大きなデメリットになります。当然ながら、仕入れにかかる時間も「仕事」であり、その人件費がかかりますから。
 
これが1点物だと高くなる理由です。
 
 

3.輸入品だから高い

 
英国雑貨トゥーシェのように、遠いイギリスからアンティークを輸入している場合、渡航費・滞在費・運送費・関税などの経費がかかります。当然ですが、それらの経費は最終的な価格に影響します。
アンティークは1点物なので、基本的には実物を見て選ぶ必要があり、仕入れの度に渡航費・滞在費がかかります。
 

4.希少性があるから高い

 
これも前述した「少ないから高くなる」という理屈です。
これは1~3までのように原価に関する問題ではなく、「付加価値」の問題です。
 
「120年も昔の人が思いを込めて作った物」
「今ではもう作れない物」
「あの有名な偉人が所持していた物」
「希少な素材が使われている物」
 
なかなか魅力的なフレーズだと思いませんか?
こういった「特別な物を持ちたい」という人のために、量産されてない価値のある品を見つけ出すのは宝探しのような作業です。実は非常に多くの時間がかかっています。運もありますが。
 
また、「歴史的な価値がある」などの理由もここに包含される理由であり、最もアンティークらしい夢のある理由だと思っております。他の理由は正直に言って、現実的で夢のない理由になってしまっていますから。
 
 

5.リスクがあるから高い

 
これは「そう頻繁に売れない物だから高くなる」という事です。
売れにくい品物は、当然売れ残る確率も高い訳で、この節のタイトルの「リスク」とは不良在庫リスクの意味です。
 
アンティーク品は通常、「趣味雑貨」に属するものが多いと思います。
つまり、生きていく上では、あってもなくてもいい物で、あくまで趣味で手に入れたい物という意味です。
こういった趣味性の高い物は「1種類ごとの売れる確率」を見ると、かなり低いです。そのため販売する物の種類数を多くする事で、売れる「個数」を上げる事ができます。ただし、1個1個の販売確率が低いという事実は変えられないため、安く販売していると「仕入れにかかる経費」「販売にかかる経費」「破損」「不良在庫」などの費用が種類数に比例して大きくなり、全く利益が出ないどころかどんどん損益が増えていきます。
 

結論として、販売価格を高くし、1個を販売した際の「利益部分」を大きくせざる得なくなるのです。

 
「売れないのであれば、逆に安くするべき!」と思う方もいるかもしれません。確かに、それも一つの方法です。ただし、(真っ当な商売をしている場合は、)価格は「実はそう安くできない」事と、趣味性の高い品は「多少安くても興味のない人には不要」であり、結局のところ行き詰ってしまうのです。
 

まとめ

 
上記のような色々な原因・理由が混ざり合って、アンティーク品は現代品よりも高額になることが多いです。
業者によってはリーズナブルな所もありますし、高価な所もあります。最終章で、その辺りに触れてみようと思います。
 
 

アンティークの価格は業者によって異なる

 
アンティーク品はそもそも数が少なく、出来・劣化状態も含めた「同じ商品」が同時期に販売されている事は多くありません。また、その商品が製造されてからかなりの年月が経っている事が多く、元々の販売価格が分からないことがほとんどです。
 

つまり、「メーカー希望小売価格」や「参考上代」のような参考値が全くない状態になります。

 
なので類似品・同品でも業者によって価格が異なり、場合によっては大きく値差がある事もあります。
 
海外からの輸入アンティーク品の場合、仕入れ値だけでなく仕入れ作業にかかった経費(渡航費・滞在費・運送費・関税など)が大きく影響します。とても平たく言うと、効率的に大量の商品を手に入れられれば、最終的な価格を低くできる事が多いです。ただし、効率的に大量に商品を手に入れるという事は、逆説的に「1つ1つの商品を選ぶ時間をかけていない」とも言えます。基本的には、前者と後者はトレードオフ(二律背反)の関係です。

上図のように、効率的に仕入れすれば低価格にはできますが、状態が悪いものが多くあったり、希少なものは手に入れられない事が普通です。これはあくまで一般的な話ですので、参考程度に考えてください。
もしかしたら「大量・高効率に希少品を輸入していて、1つ1つの商品に対する熱意もすさまじく、低価格」な業者もいるかもしれません。
※ 英国雑貨トゥーシェは、この図で言うとちょうど真ん中くらいに位置しているかな、と考えております。
 
 
最後に、本当に希少なアイテム(美術館品レベルなど)は、上記のような一般的指標には全く当てはまりません。仮に歴史的発見レベルの物だったら、仕入れ値など一切関係なく超高額になってもおかしくはありません。
 
 
 
長文乱文になってしまいましたが、最後まで見て頂きありがとうございました。
おしまい…
 
いぬお☆